プロジェクト紹介

サブサハラアフリカ村落給水施設運営維持管理の課題と教訓

実施背景

本研究の実施当時(2008年)は、村落給水率の途上国平均値が76%であった一方、サブサハラアフリカ48力国を見るとその内23か国は同村落給水率が50%以下と非常に低く、48か国平均値も46%に留まる状況でした1。当時のサブサハラアフリカ地域の村落給水セクターは、先方国政府と各国援助機関による援助協調下でのセクターワイドアプローチ(SWAp)2が推進されつつあり、また地方分権化政策の拡大、給水事業の民間委託や民営化の導入が進められるなど過去の政府主導中央集権型政策から脱却に向けての転換期にありました。しかしながら、都市部とは異なり様々な社会経済的制約を受ける地方村落部の環境下では給水施設の操業に必要な修理部品や維持管理サービスが適切に提供されにくいことが従来から指摘されており、前述の低い給水率に影響を与えていると考えられています。

他方、このような制約下においても、給水施設のより持続的な維持管理体制を目指して様々な維持管理モデルが各地で試行されていたことから、JICAによる技術協力プロジェクト/無償資金協力プロジェクトの現場で得られる事例、課題、教訓の把握と分析の意義が非常に高くなっていました。

このため、サブサハラアフリカ地域においてJICAの村落給水分野の技術協力プロジェクト等に関し、対象国の状況に応じた効率的かつ効果的な案件形成や実施監理を可能にするために有効な情報・データを取りまとめた執務参考資料を作成することを目的とし、本調査研究が実施されました。

  1. UNICEF・WHO合同モニタリングプログラム報告書(2008年)
  2. 当該国の確固たるマクロ経済枠組みに則した、先方政府主導の単一/包括的なセクター政策。種々のプログラムから構成され、援助機関からの全ての資金提供を含むことが多い。

活動内容

  • モザンビーク国地方政府関係者からの聞き取り調査

  • ルワンダ国でのハンドポンプ施設調査

2009年8月から2010年3月にかけて、サブサハラアフリカ地域の計10カ国(エチオピア、ガンビア、ザンビア、シエラレオネ、セネガル、タンザニア、ブルキナ・ファソ、マダガスカル、モザンビーク、ルワンダ)を対象に文献調査及び現地調査を他コンサルタントと共同で実施しました。

なお文献調査では、調査対象国に関連するものだけではなく、サブサハラアフリカ全体を取り巻く援助の国際的環境・潮流に関する資料も対象とし、現在の各国の現状に至るまでの背景・経緯の把握も行っています。

また現地調査では広く先方国政府、各国援助機関、住民組織や関連民間企業を含むプロジェクト関係者から当該国の村落給水セクターの現状、援助動向、給水施設の運営維持管理の現状について聞き取り調査(写真上)を実施しました。ここでは、過去我が国無償資金協力により建設された各種村落給水施設の現況調査(写真下)に加え、他国援助機関が実施したプロジェクトの調査等も行いました。

本研究による提言
  • タンザニア国行政関係者への研修風景

  • ザンビア国スペアパーツショップでの調査

上記調査の実施結果を踏まえ、本研究では下記のような提言及び事業展開にかかる留意点をまとめています。

提言

1.セクター援助協調と地方分権化への対応

  • 水セクター援助協調プロセスへの積極的参画の必要性
  • セクター開発プログラムとプロジェクト型支援体制の双方の促進
  • 地方分権化体制におけるプロジェクト型支援の実施

2.持続的な運営・維持管理体制への取り組み

  • 運営・維持管理の枠組み作り(写真上)
  • 能力強化への取り組み
  • 水料金の公正な徴収と管理
  • スペアパーツ供給体制への配慮(写真下)

3.事業展開にかかる留意点

  • セクター開発プログラムとJICAプロジェクト実施スケジュールの調整
  • 社会・文化的要因の検討
  • 政策と実情の乖離
  • 民間セクターとの連携や活用

実施国

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