プロジェクト紹介

ザンビア国地下水開発計画

実施背景

  • ザンビア位置図

  • 劣悪な既存水源を利用する住民

ザンビアはアフリカ大陸南部地域に位置し、タンザニア、マラウィなど8か国と国境を接する内陸国で、日本の約2倍に当たる75.26万km2に約1294万人 (2009年)の人口を抱えています。ザンビアは銅やコバルトなどの鉱物資源に恵まれていますが、銅の生産に依存するモノカルチャー経済で、その国際価格の変動がザンビア経済を左右する不安定な構造となっています。近年は銅価格の上昇に伴い、年6%前後の経済成長を示していますが、一方で国民の貧困率は依然として高く、ザンビアの人間開発指数(HDI)は世界169ヶ国中150位(2010年)と低迷しています。中でも5歳未満児童死亡率が1000人出生当たり148人(2008年WHO)と世界平均の2倍の数値となっており、不衛生な水の利用などによる下痢が主な原因の一つと言われています。このことからも、ザンビアでは、水問題が最重要課題の一つと位置づけられていますが、給水サービスの普及率は依然として低い水準にあり、安全な水へのアクセス率は地方部で43%(2006年)となっています。

活動内容

このような状況を受け、我が国は1985年から現在まで約20年に亘り給水施設建設を支援しており、当社はその中でも1991年の「地方給水計画フェーズIII」から2013年の「第三次ルアプラ州地下水開発計画」まで継続的にザンビアの地方給水案件に携わっています。これら地方給水案件は、深井戸の掘さく、その深井戸にハンドポンプの据え付けを行う無償資金協力であり、2011年までにハンドポンプ付深井戸が約1500村落に設置され、44万人の安全な水へのアクセスに寄与しています。

1991年 地方給水計画(フェーズIII) ハンドポンプ付深井戸新設364本(日本220本、ザンビア144本)
既存井戸改修160本、井戸掘さく機材2式
1997年 南部州地方給水計画 ハンドポンプ付深井戸新設220本、井戸掘さく用スペアパーツ1式
2001年 旱魃地域給水計画 ハンドポンプ付深井戸新設298本、井戸掘さく機材2式
2003年 北部州地下水開発計画 ハンドポンプ付深井戸新設163本、井戸掘さく機材1式
2008年 ルアプラ州地下水開発計画 ハンドポンプ付深井戸新設200本、ハンドポンプ維持管理工具
2011年 第二次ルアプラ州地下水開発計画 ハンドポンプ付深井戸新設216本
2013年 第三次ルアプラ州地下水開発計画 現在、調査実施中
地下水開発の技術移転
  • 掘さく工事

ザンビアは、全土に亘って地下水が賦存しています。地下水には、地層の浅いところにある「自由地下水」と、深部の断層破砕帯を流動する「被圧地下水」の2種類に大まかに分けられます。自由地下水は、地表に近いため、掘さくにかかる技術・労力・コストは少なくすみますが、地表に近い分、環境に左右されやすく、乾期には枯れてしまったり、し尿や化学肥料などの汚染が懸念されます。そこで本プロジェクトの支援ではより安全で持続的に利用できる被圧地下水により水を供給しています。

この為には、深部を掘さくするために適正な技術が必要となりますが、日本の支援では、深井戸掘さく機材をザンビアの実施機関である水利局に調達すると共に、コンサルタント、施工業者は水利局技術者に対して技術移転をしながら深井戸掘さく、揚水試験、ポンプ基礎の施工、ハンドポンプの設置を行なっています。これにより現在も水利局は、それらの経験を活かして、ザンビア全国での緊急工事や公共施設への深井戸掘さくを行ない、給水サービスの普及率向上に寄与しています。

住民の希望を尊重した掘さく地点の選定
  • ハンドポンプ利用する住民

掘さく候補地点の決定に当たっては、住民の希望を優先的に考慮することとし、ポンプ設置後住民が利用・管理しやすい場所となるように努めています。

計画時には社会条件調査を通して村落の状況や住民の希望を確認し、水理地質状況、地表踏査及び電気探査による水源位置を判断することに加えて、住民の生活排水等による地下水汚染の影響を考慮して慎重に選択しています。

水質に対する考慮

ザンビアでは地域により水質のpH値が低い井戸があります。地下水から水を揚水するハンドポンプの揚水管は、鋼管を使用していますが、pH値が低い酸性の地下水により管が腐食してしまい、ポンプ故障の一因となります。このため、各水源のpH値に応じ、酸性の水にも影響を受けないポリ塩化ビニル(PVC)製の揚水管を利用するようにしています。

また、ハンドポンプ設置後、鉄分濃度が高くなる場合があり、井戸掘さく後、一定期間水質モニタリングをして、鉄分濃度に問題ないと判断してからハンドポンプを設置するようにしています。

当社は、こういった現地の自然環境に応じた対策を取り、持続的にポンプが利用できるように対応しています。

維持管理に対する考慮
  • ハンドポンプ修理研修

ザンビアの国家水政策として、住民参加による給水施設の維持管理をプロジェクト実施の方針としています。住民に「給水・衛生」に対する意識改革をもたらすために、村落水衛生委員会の形成もしくは再組織化を行うとともに、施設を運営維持管理する体系的な知識や技術、組織運営にかかる能力向上を図るためのソフトコンポーネントを行っています。

JICAによる2004年の現況調査では、649箇所のハンドポンプ付深井戸給水施設の内、80%以上の施設が稼働していることが分かりました。

実施国

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